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明治座五月公演
「うそつき弥次郎」

at 明治座

 作・演出 水谷龍二
 出演 風間杜夫(弥次郎)/平田満(伊八=ニセ黄門)/余貴美子(お梅)/要潤(直次郎=ニセ助さん)/安倍麻美(田辺志乃)/麻乃佳世(お鈴)/渡辺哲(亀造=ニセ格さん)/小宮孝泰(徳兵衛)/でんでん(喜助)/轟二郎(万事世話九郎)/菅原大吉(神森恭四郎)/小林美江(おしげ)/森宮隆(銀次)/三田村周三(捨吉親分・寺社奉行の役人)/新納敏正(清助)/朝倉伸二(梶半三郎)/築出静夫(戸田友之進)/江端英久(田辺慎之介)/田島ひさし(留吉・茶店の婆)/岡幸次郎(冨の市)/真山章二(喜六)/大出勉(重三)/田村友里(おはつ)/星野園美(おたね)/浅倉いづみ(おそめ)/棚橋幸代(おみよ)/大塚まえ(おきみ)/室伏ひかり(おみつ・金太)/鳥居ちゃちゃ(おすぎ・おふさ)

 出るよ、とは言われていたけど、実現までが実に長く、それだけに言葉に尽くせぬ感慨のあったこの舞台。ましてや本人の心情やいかばかりか、というところで、観る前からしみじみしてしまってました。
明治座という大劇場、客層としては年配の方が多く、演目もそれにあった時代劇。風間杜夫、平田満という蒲田行進曲コンビを筆頭に錚々たる出演陣で、その中にまえちゃんが混じってるのがファンとして誇らしいとともに、見事周囲に伍して頑張ってほしいとエールを送りたい気持ちでもあり。
 三時間近い長丁場の舞台で、三幕に別れ、幕間の休憩時間には劇場内で食事をしたり土産物を買ったり、というのがここ明治座での観劇スタイル。
 蒲田行進曲のテーマをBGMに開幕すると風間さんの落語からスタート。そもそもこの舞台、落語をモチーフに膨らませたお話だそうで。いきなり"吊り"の仕掛けで風間さんの宙乗りもあり。落語をやりつつ、2階席3階席のお客さんにご挨拶。
 以下はストーリー紹介です。ネタバレ注意。長いので読み飛ばし推奨です(じゃあ書くなよって。すんません)。



一幕
弥次郎は"うそつき弥次郎"と呼ばれるほらふき男だが、人様を泣かせるようなうそはつかないというのが自慢。今日も吉原で遊女のお梅を相手に得意のほらを吹いてよい機嫌。お梅を身請けするから待っててくれという弥次郎に、お梅もいつまででも待つよ、とまんざらでもない様子。
半年の後。湯島天神の前で、富くじに興ずる人々の姿があった。遅れてそこに現われた弥次郎。彼も富くじで一攫千金を狙い、その金でお梅を身請けしようという腹。だが、そう上手くいくわけもない。境内脇の茶店で、旗本が頼んだ団子をうっかり食ってしまった老人と供二人の3人連れをとっさの機転で救ってやる。件の旗本、神森はこの辺りで随分幅を利かせている様子。
続いて旅姿の武家の姉弟が茶店にやってくるが、彼らを相手に自信なさげな客引きをしている宿屋のおかみを見て驚く弥次郎。それはなんと近頃姿を見なくなっていたお梅だったのだ。話を聞くと、身請けされて宿屋のおかみとして迎えられたはいいが、亭主は妾をとっかえひっかえの女癖の悪さで優しかったのは最初だけ、小姑にいびられるわ、宿屋の仕事には慣れないわでさんざんらしい。弥次郎に店で働いてもらえると心強い、と乞われ、惚れた弱味でその話を受ける弥次郎。
問題の宿屋・武蔵屋では、番頭が客引きをしているが一向客を捕まえられない。そこへやって来た弥次郎、さっそく持ち前の話術で客寄せを始める。番頭や女中が感心しているところに、先ほど弥次郎に窮地を救われた三人組がやってくる。老人は何やら弥次郎の視線を避ける様子だが、供の二人は客引きに乗り気となり、武蔵屋に泊まることとなる。
部屋に入ってくつろぐと、いきなり供の二人の態度が豹変、ご隠居と立てられていた老人・伊八は実は下っ端だった。彼らは水戸のご老公一行を騙って上手い汁を吸おうと企む小悪党だったのだ。ところへ、相部屋をお願いできないかと、番頭が先ほどの武家の姉弟を案内してくる。姉の美しさにやに下がって、承知する三人だが、部屋の仕切り方で揉めることに。そこにまたしても弥次郎がやってきて、鮮やかに場を捌いてみせる。弥次郎、武蔵屋にやって来て早々に地歩を築いた格好だ。お梅の亭主、徳兵衛にも引き合わされるが、徳兵衛はお梅の話の通り、妾の芸者・お鈴を部屋に引き込んでやりたい放題。一方、武家の娘・志乃は、伊八たちに「もしや黄門さまでは」と声をかける。姉弟は仇討ちの旅の途中で、仇を探すのを手伝ってもらえないかというのだ。いいカモが来たとばかり、仇討ちを手伝うことを了承するニセ助さん・直次郎。
弥次郎が風呂を沸かしていると、伊八が湯を使いにくる。「お前はケツまくりの伊八だろ」と伊八の老人の扮装を看破してみせる弥次郎。二人は幼なじみだったのだ。伊八も渋々ながら観念するが、黄門様の騙りの件はまだなんとか隠そうと悪あがき。

二幕
旗本・神森の屋敷では手下の侍たちとこの界隈のやくざの親分・捨吉の一味とがたむろしている。最近、うわさになっている神隠しは彼らの仕業で、女をさらっては屋敷に監禁し、売り飛ばしていたのだ。今宵も新たに一人町娘をさらってきて、座敷牢に閉じこめる。そこへ、徳兵衛がやってくる。彼も宿の泊まり客の中から獲物を物色することで、この企てに荷担していたのだ。そして、徳兵衛が挙げた次の獲物は志乃だった。
そうとは知らない志乃は、ニセ黄門一行に手伝ってもらい、仇探しに乗り出す。
弥次郎はというと、隣室の騒ぎがうるさくて眠れないという浪人の訴えを聞き、その場も上手く納めてしまう。次から次の機転を利かせた働きぶりに、番頭の喜助などはすっかり弥次郎に心服してしまった様子。徳兵衛の覚えも悪くない。
伊八のことをうさんくさい目で見つつも、二人して想い出話に華を咲かせる弥次郎だったが、そこへ志乃が神隠しにあったという報せが入る。志乃のことが気になっていた伊八は動転気味。更にやって来た妾のお鈴の話で、神隠しの黒幕が神森や徳兵衛たちらしいと分かる。相手が悪いとばかり、直次郎はさっさと逃げだそうとするが、弥次郎はみんなの前で「ここにおわすお方をどなたと心得る」とやり始め、ニセ黄門一行を本物扱いすることで、彼らを志乃救出に担ぎ出そうとする。

三幕
それでも立ち去ろうとする直次郎だが、あにはからんや、伊八が弥次郎の手に乗って、皆の前で、黄門さまを演じ始める。伊八は志乃を助けたいのだ。なぜか兄貴分のニセ格さんまでがそれに乗ってしまい、ニセ黄門一行は弥次郎とともに旗本屋敷に乗り込むことに。
旗本屋敷では一足先に乗り込んだお鈴が新たに牢に入れられていた。「つらい時こそ笑うんだよ」と歌を歌って励まし合う女たち。
弥次郎たちは屋敷につくなり、葵の紋所をかざしての決めゼリフを並べるが、恐れ入るかと見えた神森から、なんと「水戸のご老公は先頃亡くなった」という衝撃の一言。仕方なく、荒事に臨むことになるが、多勢に無勢で危うし、と見えたところで敵の用心棒が寝返って形勢逆転。悪人たちは皆やられてしまうが、用心棒、先に宿で眠れないと騒いでいた万事世話九郎という浪人が志乃たちの仇であると発覚する。逃げも隠れもせんわ、と申し開きもせず斬られようとする彼に、弥次郎は武士も町人も同じ人間、生きてこそだろうと説得する。それを聞いていた志乃は世話九郎を見逃すことにする。かくて八方丸く収まった。
志乃たちは故郷の尾張に帰ることになり、ニセ黄門一行も、次の商売を思案しながら旅路につく。直次郎と伊八は志乃のことが気になる様子だが、弥次郎に別れを告げて去っていく。
主のいなくなった武蔵屋では、お梅が女将として切り盛りを始め、喜助は「弥次郎とおかみさんが一緒になってくれれば」と言うが、お梅のところには捨吉のところの若い衆、銀次がやってくる。二人はいい仲だったのだ。それを見てしまった弥次郎、「うそつき弥次郎が大きなうそをつかれちまったってわけか」と身を引くことに。武蔵屋を出ていく弥次郎。
湯島天神前の茶屋。お参りをして、旅立とうとする弥次郎を追ってお梅がやってくる。自分も一緒に連れていってくれというのだ。宿のことは、銀次のことはどうするのだと問う弥次郎に、「あんたと一緒にいたいんだよ」とお梅。「いい殺し文句を吐きやがる」と受ける弥次郎。二人は腕を組んで歩み去っていく。
落語がモチーフ、というシリーズの第三段ということですが、ストーリーは全くオリジナルで、弥次郎という落語のキャラクターからイメージを膨らませて作った、という感じ。冒頭の風間さんの落語がまさにうそつき弥次郎そのもので、他に「宿屋の富」と「宿屋仇」の二編の落語が劇中にちりばめられています。って自分は落語通ではないんで、宿屋の富ってのは正直知りませんでしたが。
時代劇人情コメディ、といった内容で、役者さんが達者な方が多いので、客としてはターゲットど真ん中ではないだろう自分もかなり笑わせていただきました。
風間平田コンビの掛け合いの面白さは当然として、悪役の旗本の変態チック(笑)な演技とか、ニセ格さんのとぼけた味などがなんとも言えず。要潤、安倍麻美の若手二人も、単なる話題提供的キャスティングで終わらず、なかなか頑張ってました。要潤は元々結構好きなんだけど、安倍麻美さん、声の通りだけなら上から数えたほうが早いくらいで、ちょっとビックリ。
まえちゃんの役はおきみという町娘で、一幕の富くじの場面、三幕の旗本屋敷の牢ではモブ的に出てきます。一番の見せ場は二幕開始間もなく、拉致されて旗本屋敷に引っ立てられてくるところで、威勢よく旗本・神森に食ってかかり、短いシーンながら、気が強くもかわいらしい娘っぷりを見せてくれます。縛られたまま床にぶっ倒れるシーンでは、舞台上の他の役者さんが、本当に心配そうに腰を浮かしてたのが印象的。そのくらい気合い入ってました。モブ的に出てくる、と書いた一幕三幕のシーンでも細かい芝居をしていて、全力でこの舞台に臨んでるのが感じられました。
久々の舞台、かつこれまでにない大きなハコとあって、心中幾重にも期するところがあったと思いますが、見事抜擢に応えたのではないかと。
観劇当日も胸いっぱいでしたが、後日、テレビ放送を見て、ラストの出演者テロップに「大塚まえ」の名前を見た時はやたらぐっと来てしまった。
再び女優として歩み出した彼女に幸多かれ、っつーことで。とかなんとか照れ隠しみたいなこと書かないと終われないっすわ。
でもほんと、頑張ってほしいなあ。

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