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飛行機雲よ、虹になれ!!〜母子草の詩〜
at 全労済ホール スペース・ゼロ 恒例となりました、三原じゅん子さんを迎えての劇団フジの舞台公演。今回タイトルには入ってませんが、昨年、一昨年に行われた「桜ちりなば」のシリーズの3作目、ということに流れとしてはなるんでしょう。三原さんに加え高畠華澄ちゃん、杉義一さんらも出演していて、お馴染の顔触れです。 野々山健は、中学生の娘、ランと2人暮らし。昔世話になっていた元テキ屋一家の内田家が所有するビルに間借りして、タコ焼き屋を営んでおり、テキ屋時代からの気風の良さで、近隣の面々の人望を集めている。娘のランのほうは、暴走族やヤクザ相手にも臆せず突っかかって行ったり、少々無鉄砲で不良っぽいながら、正義感ある男勝りな少女。 内田家の娘、かほるが娘を連れて婚家から戻ってきたのを皮切りに、立て続けに事は起こる。ランの母親、喜和子が健の前に現れたのだ。ランと健は実の親子ではなく、内田家の長男文治と喜和子の間に産まれた娘であり、喜和子は産まれたばかりのランを残して、アメリカに行った文治の後を追って行ってしまった。健はテキ屋稼業の姉貴分であり、想い人でもあった喜和子の娘であるランを引き受けて、今日まで自分の娘として育てて来たのだ。アメリカで会社を興し成功したという喜和子は、今までの償いにこれからはランを引き取って手ずから育てて行きたいという。死んだと聞かされていた母親が現れたことに憤るランに、もう嘘はつかないと約束させられる健だが、自分が実の父でないことは打ち明けられないままであった。 喜和子の元に行く気のないランは、喜和子が健とヨリを戻すなら自分も一緒に行くと条件を出すが、喜和子はあっさりとこれを飲み健に結婚を持ちかける。健もすっかりその気になり、結婚してアメリカに行くことに話は決まる。健を憎からず思っているかほるは事の成り行きに心中複雑そう。 ビルの売却話は進み、不動産業者は説明会にて露骨に立ち退きをほのめかすようになるが、喜和子と結婚してアメリカへ行くことに決めた健にはどこか他人事で、その態度を店子のみんなに詰られる。場を収めようとした富三郎は心臓発作を起こして病院に運ばれてしまう。続いて、「私の父親は誰なんだ」とランに詰め寄られた健は熱から覚めて喜和子との結婚を考え直し、かほるに向かって「アメリカ行かないかも」と漏らす。更に「アメリカ行かなかったらお前俺の女房になるか?」と持ちかけるが、これは取り合ってもらえない。 富三郎の発作で中断した説明会が再会、脅しをかける業者側のヤクザからみんなを庇ったのは健だった。乱闘が始まって場が紛糾したところに喜和子の会社がビルを買収したという報せが。一件落着かと思いきや、間髪入れず、今度はランがバイク事故で病院に運ばれたとかほるが駆けこんでくる。一同病院に向かうが、健はあまりのショックに歩くこともできないほど。 幸い、ランは軽傷だった。が、一緒に事故に遭った島野はまだ治療中だ。事故の遠因、すなわち健との生活をかき乱した張本人として、やり場のない感情を喜和子にぶつけるラン。そこに、同じ病院に入院していた富三郎がやってきて言う。「お前の名前は健がつけたんだ」幸せが蝶のように飛んでくる、という胡蝶蘭の花言葉にちなんで。 病院の屋上で涙の余韻に浸っていた健にかほるが話しかける。アメリカ行きはやめ、ランと二人でタコ焼き屋を続けることにしたと告げる健。「お前にも振られちまったしなあ」と言う健に、「別に振ったわけじゃないよ」とかほる。健は昔から喜和子のことを引き摺っていた。だから改めてきちんと気持ちを口に出来たら結婚を考えてもいい、というのだ。良い雰囲気にはなるのだが、邪魔が入ってしまう。喜和子はいったんアメリカに帰るとかほるに言い、しかしランのことも健のことも、諦めてないと宣言。「ライバルだね」「負けませんよ」と笑いあう二人。屋上にランとヒカルの二人もやって来る。あれは英語でなんて言うの、とランが飛行機雲を指差すと「ジェットストリーム」とヒカル。「ジェットストリームだと先端部分で、飛行機雲は尻尾のほうって感じがするね」勢いのない"飛行機雲"を健のくたびれ具合になぞらえて笑う一同だが、健は「あの飛行機雲だって、お天道様に照らされて虹になるかもしれねえぞ」と返す。そして夕焼けの中、空にはいつしか虹がかかっていた。 中心人物の健ちゃんとランがそれぞれダブルキャストで、更に健ちゃんのほうは班ではなく公演日で役者さん変わってたので、都合4通りの組み合せが観られました。健ちゃん役は、土日の安藤さんがテキ屋のオヤジという設定に沿った雰囲気がありましたが、溝渕さんのオーバーアクションも印象的。ラン役も、高畠華澄ちゃんと小沢明日香ちゃんそれぞれ違った味があり、こちら、というふうには甲乙つけ難い。 麻恵ちゃんはといいますと、登場時はいかにもテキ屋の娘といった威勢の良さで、むしろ三原じゅん子さんがやりそうな役に見えましたが、結局は前回の舞台と同じようなマドンナ的ポジションに落ち着いてましたね。杉さんの娘ってのも前回と同じだし。子持ちというのは新境地ですが、自分の娘と絡むシーンは大体コミカルに処理されてたこともあり、想いを寄せている健ちゃんとの絡みのほうが映えるシーンが多かった。旦那と別れてすぐなのに健ちゃんといい雰囲気なのは違和感なくもないものの(一応、ラスト辺りでそこら辺の心情を説明するセリフはある)これは脚本からしてそういう風に書かれてますからね。過去に遡って登場人物の年齢とかを考えてみると、整合取り辛い部分も多々なので、あまり細かく考えず、「他の男と結婚はしたものの、昔から憎からず思っていた」というパっと見の情報だけ頭に置いて見てればいいんだろうな。実際、そうやって健ちゃんとの距離感に重点を置いてみてみると、いかにもお似合いな二人という感じのやり取りの照れ臭さが心地良い。 まあ、そんなわけで、例年通り、親子関係を中心に据えて、擬似家族的コミュニティを舞台とする人情物でした。メインキャストの役回りも大きくは違わないし、(杉さんが舞台挨拶で自ら「去年も土下座して心臓麻痺になる役だった」とネタにしてました)毎回観てる立場からしたら、もうちょっと目先を変えたものが観たいという気持ちは正直しましたが、上記したような要素がシリーズコンセプトみたいなもんなんだろうと思うので、お馴染感を楽しめるような「男はつらいよ」的存在となることができると良いのかも。家族で観に来てるお客さんが多いってことを考えると、親子人情物って受け入れられすい題材だし、次回あたりでこの先の方向性がはっきりするかな。 |
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