at 渋谷ユーロスペース
昨年のゆうばり映画祭での上映から1年近くを経て、ついに劇場公開なった「おやすみアンモナイト」。
2010年1月30日という日は豪勢な日で、この他にも麻恵ちゃんの出演した「おとうと」と「完全なる飼育」も公開初日、一度に観るのはもったいないかと思いつつ、観られるタイミングで観ておこうと映画館三軒はしごしましたさ。
「おとうと」→「完全なる飼育」と体があったまったところで、メインのおやすみアンモナイト上映館であるユーロスペースに向かう。移動時間にあんまり余裕なかったので、到着は開演10分前くらいになってしまったんですが、ロビーには入場待ちの人々がわらわらといて、かなりの入場者数になりそう。関係者もひっきりなしに動き回っていて、慌ただしさと緊張感と期待感が綯い交ぜになった場の空気は、これぞ映画の初日っつうもんだろう。
開場して客の列が館内に収まると、100超の客席もどうやらほぼ一杯。こいつは幸先いいやと気分もたかまってきたところで、本日はMCを務める麻恵ちゃんが客席後方より登場、登壇。初日舞台あいさつの始まりであります。
まずは来場者へのお礼の口上と簡単なタイトル紹介、自己紹介。「一か月くらいお風呂に入らない汚い女の子の役だったんですが、今日は舞台挨拶なのでちゃんとお風呂に入ってきました。綺麗な体と心で頑張ります」とジョークも交えつつ。こういう時、むやみにかたくなったりせず、普段のやわらかな雰囲気を崩さないのが、大塚麻恵という人の何気に大したとこだ。いや、今回はかなりナチュラルに嬉しそうでもあったかな。
挨拶中の撮影禁止と、フォトセッションの時間を設けますという説明の後、舞台挨拶に呼びこまれたのは、脚本の昼間氏を先頭に、渋木美沙さん(ホステスやよい役)、黄金咲ちひろさん(竹田奈津子役)、疋田紗也さん(竹田成子役)、辻岡正人さん(小日向登役)、神楽坂恵さん(クラブのママ・雪枝役)、白井優さん(ホステスさおり役)、そして、本作の監督でもある、増田俊樹さん(竹田道朗役)という顔ぶれ。
増田監督がポスターを貼っつけたでっかいプラカードを掲げての登場で、何事かと思いきや、昼間、辻岡そして大塚を加えた四氏は、直前まで、高円寺で告知のビラ撒き活動を行い、そのまま直で会場入りしたのだそう。熱入ってます。
まずは主演の辻岡さんから。多くの映画の中から、アンモナイトを選んで観にきてくれてありがとうございます、との挨拶の後、自らが演じた松本氏という人物の破天荒さに触れる。短くとも、バックボーンに主張がはっきり感じられる、淀みのない語りをしますね。これ、ゆうばりの時も思った。さすが主演、と言えるオーラがある。
続いてもう一人の主演である疋田さん。随分以前に、CSのなんかの番組に出てるの観たことがあって、もう少しふわふわした印象があったのですが、こちらもなかなかしっかり語る。初出演にして初主演ということもあってか、会場に集まった人を観てすごく高ぶっていたそう。人生について考えさせれる映画です、共感するもよし、こういう人もいるんだもっと自分も頑張らないと、と元気をもらうもよし、だそうです。
黄金咲ちひろさんは、いつもイロモノキャラをやりきりつつ、その実手堅く場の空気をコントロールして周りに引き継ぐっちゅー感じだ。母親役初だし派手な役、ケバい役が多いんだけど、今回の貧乏役は新境地だし、キャスティングした監督の冒険心に感謝、と押さえるところを押さえたコメント。ビジュアル金きらですが、仕事ぶりはいぶし銀だと思います。
神楽坂さんは今回友情出演ということで、と開口一番に言っていて、結構気配りの人というか、前に出過ぎないですね。こういう人、水向けて喋り倒させると面白いんだけども。クラブのママという、なかなか若い人にはハードル高い役を、「難しかったけど頑張った」という言葉からは、控えめな中にも向上心と負けん気を感じました。
ホステス役の白井優さんは、海外取材の仕事のためにこの場に来られなかった、同じくホステス役のリエコ・J・パッカーさんのことにも触れつつ、いじめ役に悩みつつ頑張ったので、その成果を観て下さい、的なコメントを。しかし、白井さん語るところのリエコ嬢の言い分「なんで(ヒロインを)いじめるのか、怒ったことないからわからない」これはなんというかすごい。なるほど世界をまたにかける行動家らしいスケール感がある。
ホステス組のもう一人、渋木美沙さんは、初の映画ということで緊張しつつも頑張ったらしい。ホステスやったことないんで、と言ってたけど、そらそういう人のが多いと思う(笑)。でも頑張ったので女のバトルなんかにも注目しつつ観てもらいたい、とのこと。
そして脚本家の昼間さん。松本氏との馴れ初めから映画の脚本を書くに至る経緯を、世界革命などの話に壮大に寄り道しつつ。「大変もりあがってまいりましたが」と、ここまで短いコメントでのリアクションに終始してMCらしくMCを務めていた麻恵ちゃんに話をぶった切られるくらいの寄り道っぷり(笑)。ちょい注意なのが、昼間さんのこういう芸風、デモだストだ革命だ、という思想系のネタは、活動としては真面目にやっとられるのでしょうが、こういう場では多くは諧謔であって、なんつうか慣れないとネタとマジの境目がわかりづらい向きもおられるんでないかと自分は思います。というか、自分もはっきりわかってるわけではない(笑)。で、実はこれ、書かれた脚本にもそういうところありますんで、それを頭に留めて観るのが良いかと。安保とかよく知らないよ、てな世代の方は特にですね。
そうそう、この映画、構成難しい、と思う人も結構いそうですが、
「疋田さん主人公の貧乏に耐え抜く母娘」パート
「辻岡さん主人公の若者たちの貧乏コミュニティ」(素人の乱)パート
この二つが交互に進行してるってことだけ早い段階でわかれば、別に構成はなんも難しくないんです。ここでつまづくとしばし混乱してしまうってパターンはありそうなので、その点注意だろうな。ってこれこそ脱線が過ぎたか。
松本氏と二人、まだまだお互い守りに入ってないと確認しあった、というくだりはマジですね。仮にジョークだとしても真実はそうだと思う。見る限りでは、もうナチュラルボーンに生き方がゲリラですもん、御両名とも。
トリは増田さん。昼間の話が長すぎて手がいたい、とジャブから入る。まあ確かにプラカードでかいし。この人もしれっとした顔でウソかホントかわからないことを言うので、ネタとマジの境目に注意ですよ。疋田さんの水着シーンがあるのですが、その撮影時に男性スタッフ陣がテンパりすぎてるので、やってらんねーよと監督の職分を放棄して逃げ出し、たまたま近場が住所である辻岡さん相手にえんえん愚痴を聞いてもらった、というね、もうこのトークどっからどこまでがネタかわかんないでしょ。でも慣れてくると、その発言の中から本当にあったことをくみ出していくのが面白かったりするんだ(笑)。
本作の特徴は独特の二部構成なのですが、男と女、貧乏と富裕、等、相反する事象を描いてみたのだ、ということのようです。
最近では僕も売れっ子になって、と「テニスの王子様」ミュージカルの出演者に同姓同名の役者さんがいるという小ネタなんかも披露。こういうのもぽろっと出てくるから拾うのにコツがいります。今回は麻恵ちゃんがなんとか相の手を入れてました。
最後に、欠席となってしまったリエコさんから、律儀にも送られてきたエアメールを麻恵ちゃんが代読。いじめのシーンは演技はやりきりつつ、やっぱりいじめかわいそう、とか思っていたらしい。でもドMなのでドSの役は楽しかったとかなんとか。この映画には貧乏でも楽しくいきていくヒントがある、生きるということの見方が変わるかもしれません、とこれもまた端的に本質に迫る良いコメントだ。
一通りあいさつ終わってマスコミ向けのフォトセッション。一般の観客も撮影許可タイム、だったのですが、写真ないので載せられません。一応ちょろっと撮ろうとはしてみたけど、自分のコンデジであの環境はきついし、あまり写真に凝りもないもんで。まあ、公式やら関係者ブログに画像いろいろアップされてるのでそちらをご覧ください。一つ言えるのは、満員の客席を前にしてか、みなさん実によい顔していたということ。企画発足から一年以上、待ちに待っただろう日がこういう形で迎えられたのはやっぱ何より嬉しいだろうなあ。
三週間と長い上映期間なので、公開終わるまでは、何かとまだまだ大変でしょうが、幸先よいスタートの勢いをそのままに、最後まで走りぬいてほしいもんです。見守るだけのこちら側も、一年以上見守ってるとタイトルへの愛着も知らず育っちゃうからね。
観賞後のロビーでも関係者同士、あるいは声をかけてきたお客さん相手に、皆さんにこやかに話していてよい雰囲気でした。これもまた一つのありうべきコミュニティの姿だと思うのですよ。映画を媒介にしてつながっていく人の姿、なんちゅー、まさしくこの映画の内容にベストマッチな光景が現実になってるのが、なんかいいやね。
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